出口 哲生

(でぐちてつお)

[ Japanese / English ]

お茶の水女子大学大学院 理学部 物理学科 教授

結び目

キーワード:数理物理学、統計力学、結び目、高分子、厳密解

本研究室では様々な未知の自然現象を新しい数理物理学の手法を用いて解明しよう としています。そして広い意味での統計物理学における新しい視点を導入することが 目標です。

主な研究対象の一つに、結び目理論を用いた高分子の統計力学があります。ここで 結び目とは何かを簡単に説明しましょう。一次元のひもを閉じたものを結び目とよび ます。図では4つの交差点を持つ結び目が描かれています。いったんひもを閉じます と、ひもを切ることなく他の結び目にうつることはできません。しかし、結び目を図 で表す場合そのやり方は一通りではなく、非常に多数の異なる図が同一の結び目に対 応します。一方、結び目を区別するため様々な数学的理論が作られました。これらを うまく応用することにより、最近、高分子の絡み合いの影響をきちんと調べることが できるようになりました。[1]

高分子は巨大分子ともよばれますが、分子の大きさが非常に大きいのが特徴です。鎖 状に伸びた細長いひものような形状の高分子が多く合成されています。身近な例とし て、例えばゴムは高分子で出来ています。また、生物を形作っている生体物質はほと んどすべて高分子の仲間であるといえます。高分子には特有な性質があります。例え ば、卵白はネバネバ(粘性)していますが、同時にプリンプリン(弾性)しています 。高分子で出来た物質には、粘性と弾性が同時に出現する(粘弾性)という興味深い 現象があります。これらの性質を理論的に説明することは全く簡単ではありません。 高分子の絡み合い効果なども重要な因子であると考えられています。

鎖状の長い高分子がたくさん集まりますと、互いに絡み合うことがあります。絡み合 いが生じますと各々の高分子は自由に振る舞うことができず、その配位は制限されま す。統計力学の言葉では、これはエントロピーの減少を意味します。結び目理論を用 いて絡み合い効果が高分子のエントロピーに及ぼす影響をきちんと調べられる場合が あり、それを追求することが当研究室独自の研究テーマの一つです。

他にも、厳密に解ける可解格子模型の研究 [2]、1次元量子スピン系・ 1次元相関電子系の厳密解の研究などを行っています。[3]


[1] 出口 哲生、「ランダム結び目と高分子の物理学」、数理科学1997年12月 号 pp. 12-19.
[2] 出口 哲生、「結び目不変量と統計物理学」、数学セミナー 1998年4月号 pp. 50-53.
[3] T. Deguchi, R. Yue and K. Kusakabe, A gapless charge mode induced by the boundary states in the half-filled Hubbard open-chain, J. Phys. A: Math. Gen. Vol. 31 (1998) 7315-7330.


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