ロドプシンの光反応ダイナミクス
(分光学)
京都大学
神取秀樹

我々は目の中の光センサー蛋白質(ロドプシン類)を使ってものを見る。それでは 、光の情報はどのようにして、視覚情報へと変換されるのであろうか?

光はロドプシンに含まれる発色団分子(レチナール)によって捉えられ、この分子 に構造変化をもたらす。それが蛋白質全体の変化へとつながり、細胞内増幅過程を経 て、神経細胞の電気信号に変換された情報は、脳に至って視覚となる。10-15 秒で光の吸収が起こってから 10-1 秒程度で視覚が発生するまでの過程において、約 12 桁の時間のあいだ、光の情報はロドプシン内部に保たれることになる。フェムト秒、 ピコ秒、ナノ秒、マイクロ秒、ミリ秒というそれぞれの時間で起こる出来事が、これ までの詳細な研究によって明らかになりつつある。

本講義においては、光の情報が時間的な階層構造の中で、どのように蛋白質の中を 伝達されるのか、最新のデータを含めて紹介する。特に、フェムト秒のオーダーで起 こる初期異性化反応を中心に捉え、ダイナミクスはどのように研究されてきたのか、 なぜそんなに速いのか、蛋白質という反応の場はどんな役割を担っているのか、とい った点について解説する。蛋白質という反応場は1015(ペタ)秒のオーダーで起こる 進化によって最適化されたものであり、ペタ秒の 時間をかけて起こったことが、フェムト秒のダイナミクスを決定した可能性がある。


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