研究室紹介
すべての物質は分子や原子からできていることは誰でも知っているだろう。 原子の中心には陽子と中性子が集中した小さな原子核があり、原子核の周りを電子が飛び交っている。 この陽子と中性子は究極の素粒子ではないことが知られている。 なぜなら、これらを高いエネルギーで衝突させると分解して、クォークと呼ばれる素粒子が現れるからである。
このように物質を細かく砕いて分解して行った先にある「極微の世界」(10の15乗m以下の世界)を、クォークや電子といった様々な素粒子の振る舞いを調べることによって明らかにしようとする学問分野を、「 素粒子物理学(particle physics)」あるいは「高エネルギー物理学 (high energy physics)」という。 われわれの研究室ではその分野を理論的に研究しているので「 素粒子論研究室 (particle theory group)」と呼んでいる。 お茶の水女子大学素粒子論研究室は1988年9月に菅本晶夫教授をリーダーとして設立された。 (菅本教授からのメッセージ)
素粒子の相互作用を記述する模型は1960年代後半に提唱された。 これを素粒子の「標準模型 (Standard Model)」という。この模型の基礎となっているのは「ゲージ理論 (gauge theory)」であるが、これは一つの素粒子が他の素粒子に転換する現象を、光子(フォトン)に似たゲージ粒子と呼ばれる素粒子の吸収・放出によって記述しようとするものである。 われわれの研究室では、まず、現在世界中で行われている素粒子実験の結果を用いて、標準模型の精密な検証を行っている。 また、より新しい模型である超対称性模型やその他の標準模型を越える模型の証拠が、既存の実験結果から読み取れるのかどうか、あるいはそれらの証拠を見い出すにはどのような実験をすればよいのかを研究している。

以下では当研究室の

  1. 研究テーマ(抜粋)
  2. 博士課程・修士課程修了者のその後の動向
  3. 研究室在籍ポストドクの役割とその後の動向

について紹介する。

[1] 研究テーマ(抜粋)

  • 粒子・反粒子の問題に関する研究
現在つくばの高エネルギー加速器研究機構(KEK)やスタンフォー ド大学(SLAC)で行われている「B」と呼ばれる粒子の崩壊過程 に関する様々な研究、スイスのCERN研究所で行われた電子・陽 電子衝突実験の理論的解析その他に関連した研究である。 B粒子の崩壊過程では、B粒子の崩壊率と反粒子である反B粒子 の崩壊率の間に差があることが最近発見された。 粒子と反粒子が同等に振る舞うときにCP対称性があるというの で、両者に差があれば「CP(対称性)の破れ」があることにな る。この「CPの破れ」はわれわれの重要な研究テーマの一つと なっている。この破れは又「なぜ宇宙には物質は多いが反物質 は少ないか」という物質の起源とも関係している。
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  • 素粒子の質量の起源に関する研究
最近、ニュートリノと呼ばれる電荷をもたない非常に軽い素粒 子の質量が観測される様になった。これに関しては、種々の素 粒子の質量がどのような機構で与えられるかという、未解決の 問題にもわれわれは取り組んでいる。

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  • 超弦理論に基づく相互作用の統一的記述 に関する研究
一方、種々の素粒子とその間に働く様々な相互作用を統一的に理解 しようとする際に、弦理論 (string theory) は極めて重要である。 弦あるいは「ひも」を一つの素粒子と考える訳だが、ひもには様々 な振動パターンがあることがよく知られている。 この振動パターンの多様性を素粒子の多様性とみなすことによって、 様々な素粒子を統一的に理解しようとするのが弦理論である。 更に、1つのひもが2つのひもに切れるという単純な反応過程から、 種々の素粒子の相互作用が導き出される。 最近この弦理論は急速に発展しつつある。
例えば電磁気では、電気を帯びた電荷の他に磁気を帯びた磁荷が考 えられる。この様な電気の世界と磁気の世界は互いに 「双対な(dual)関係」にあるという。 弦理論は電磁気をも含む理論なので、弦が電気的な性質をもつと するならば、それと双対な関係にある磁気的性質をもった拡がった 物体が必要となる。これが最近「Dブレーン」として導入すること が可能となった。
われわれの研究室では、この様な双対性を含む弦理論に関する様々 なテーマに関する研究を行っている。極微の世界になると、 時間軸が1つと空間軸が3つの計4次元の世界とは異なった世界で あるかも知れない。弦理論のように10次元の世界であるかも 知れないし、逆に4次元よりも少ない次元の世界であるかも知れな い。空間自体も単純な(x,y,z)座標で書き表せないかも知れない。 この様に種々なアイデアに基づいた夢多き理論を開発するのも、 素粒子論の仕事である。われわれの研究室でも種々の創意に富んだ 理論を提案している。あるものは現在の実験や観測でも検証できる かも知れないが、ほとんどのものは残念ながら現在は検証できない ものである。しかしながらわれわれは、創意に満ちた理論という ものは、近い将来には必ず、種々の分野において中心的な役割を するであろうと考えて研究を行っている。
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[2] 博士 課程・修士課程修了者のその後の動向 (2010年3月現在)

博士課程修了者 (計27名)
年度 (1) (2) (3) (4)
H21 お茶の水女子大学リサーチフェロー お茶の水女子大学人間文化創成科学研究員、京都産業大学益川塾研究員 お茶の水女子大学人間文化創成科学研究員
H20 バーミンガム大学(英国)博士研究員
H19 お茶の水女子大学リサーチフェロー ハノーバー大学(ドイツ)博士研究員 国立天文台博士研究員
H18 みずほコーポレート銀行
H17 無し
H16 お茶の水女子大学人間文化研究所研究員 お茶の水女子大学人間文化研究所研究員
H15 無し
H14 台湾国立大学 ポスドク研究員 お茶の水女子大学大学院人間文化研究科助手 北海道大学研究生
H13 無し
H12 英国ダラム大学高エネルギー現象論研究所研究員 東京大学素粒子物理学研究センターCOE研究員
ヨーロッパ高エネルギー原子核研究センター(CERN)
学振派遣特別研究員
京都大学基礎物理学研究所日本学術振興会特別研究員
H11 大学非常勤講師 高エネルギー加速器研究機構(KEK)日本学術振興会特別研究員
(株)アドテック(ソニーへ派遣)
H10 (株)日本総研
H09 東京大学宇宙線研究所協力研究員 (株)コナミ
H08 光陽国際特許事務所
H07 米コロンビア大学理論部ポストドク研究員
H06 大学非常勤講師
H05 呉大学社会情報学部助教授



修士課程修了(及び中退)者(計58k名)
年度
(1)
(2)
(3)
(4)
H21 JAXA JAEA IHI 本学博士課程進学
H20 東京海上日動火災保険 ソフトバンク 本学博士課程進学
H19 本学博士課程進学 みずほ情報総研
H18 本学博士課程進学 本学博士課程進学 本学博士課程進学 本学博士課程進学
民間企業就職
H17 本学博士課程進学
H16 NTTコミュニケーションズ 本学博士課程進学 本学博士課程進学 本学博士課程進学
H15 日本総研 東芝研究開発センター 神津精機 本学博士課程進学
他大学博士課程進学
H14 IBM
H13 大和証券 ニコン 本学博士課程進学 本学博士課程進学
H12 (株)みずほフィナンシャル ヒューレットパッカードの子会社 本学博士課程進学
H11 A&T JR東海 本学博士課程進学 本学博士課程進学
本学博士課程進学
H10 IBM 平成12年度博士課程修了の4)
H09 平成12年度博士課程修了者の1) 平成12年度博士課程修了者の2)
H08 平成11年度博士課程修了の1) 平成11年度博士課程修了の2)
H07 (株)日立国際電気 平成10年度博士課程修了者の1) 平成11年度博士課程修了者の1)
H06 平成9年度博士課程修了の1) 平成9年度博士課程修了の2) (株)富士通 JR総研
H05 平成8年度博士課程修了の1)
H04 平成7年度博士課程修了の1) (株)富士通
H03 本学中退後、米テキサス大学博士課程修了、 現在米アパッチポイント天文台研究員
H02 (株)花王文理研究所に勤務、その後退職 群馬天文台所員 平成6年度博士課程修了の1)
S64 平成5年度博士課程修了の1)




[3] 研究室在籍ポストドクの役割とその後の動向

1990年以来、研究室にポストドクを積極的に受け入れて来た。 彼らは日本学術振興会特別研究員や素粒子奨学生として、ある いは物理学科の非常勤講師として講義・演習等を担当しながら、 院生を教育し共同研究を行った。
過去に滞在したポストドクの総数は11名であり、多くの人が その後、他大学において常勤職を得た。 藤田保健衛生大教授、山口大、江戸川大、防衛大、呉大、千葉 工大、秋田経法大、マウントアリソン大(カナダ)各助教授、 カルカッタ大(インド)、武蔵工大講師等である。
以上の内、日本学術振興会外国人特別研究員として受け入れた 外国人研究員は、計3名である。

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管理者:曹 基哲
連絡先:cho@phys.ocha.ac.jp
掲載日:2007年4月17日